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「む? これは確か……」 鳴り響いた着信音は、通常の着信に非ず。画面を見ずとも容易に聞き分けができるよう専用に変えておいたものだ。こちらで特に問題や事件が起こったわけではないとすれば、何かしらの指令なのだろう。『大佐』からの着信であれば、尚のこと。 『ターゲット到着。以降、任務を遂行せよ』 「……なるほど、今日であったか」 時期外れの転入生が風南島へ来ることは、事前の連絡にて知らされていた。だがしかし、正確な日時が通達されていたわけではない。むろん、何時如何なる時に何事があろうと、動揺することなく迅速かつ的確に対処することこそが、言うまでもなく俺の為すべきことなのだが。 「フッ、いよいよか」 ”初音島のトリックスター”こと、あのお方が見事にこなした仕事――世界を守る――という重大な任務が、俺にも回って来たのだからな。到着日時が知らされていないことぐらいで慌てふためくようでは、そもそもこの責務を全う出来る訳がない。 「だが……」 言うは易く行うは難しの言葉どおり、理解はしていても、初任務の俺に無事こなすことができるのだろうか……。 『難しく考えることはない。友として、同志として、自分がどうしたいかだ。それさえ己の心の中でしっかりと持つことができれば、自ずと先は見えてくるはず』 「同志……か」 見知らぬ土地に初めて来るであろう同志の心中には、相応の不安が渦巻いているはず。つまり、緊張は俺だけに限ったことではない。そう、互いに不安を抱いているのであれば、それこそ『同志』という言葉に相応しい関係ではないか。 「……ふむ」 友。 「そうと決まれば……」 早速、任務に取り掛かろう。とにかく一つでも多く、転入生の情報をかき集めることが必要だ。事前の連絡が必要最低限のものだったことも、俺に課せられた試練なのだろう。ここで躓くようであるならば、先がないのも同然なのだから。 「む、だが……」 この島で転入生の情報を掴んでいるのは、我が非公式新聞部以外だと学園関係者でも一握りのはずだ。もしも情報が一般の学園生にまで漏れているとなれば、俺のところには真っ先に情報が来ていて当然なのだが、今現在でそれは無い。 「……面白い」 この辻谷大和、この難題に全てを注いで挑ませてもらおう。我が同志を微塵も迷わせることなく、最高の日々を提供することを誓おう。 「フッ」 それでは、友を迎える準備を始めようではないか。 さあ行こう。 |